第5回 賃労働と資本 カール・マルクス 国民文庫
p82から
エンゲルスの修正以前の『賃労働と資本』でも、事実上はこの区別がはっきりしており、それにもとづいて賃金や剰余価値の説明がおこなわれている。しかしこの点がほんとうに理論的にはっきりするのは、『資本論』第一巻(一八六七年発行)である。
『賃労働と資本』を書いた当時のマルクスは、まだマルクス主義経済学を完成していなかった。したがってエンゲルスは、後年のマルクスの正確な概念規定にもとづいて、『賃労働と資本』の用語や表現をいっそう科学的な形になおしたのである。
以上のごとについては、この本のはじめのエンゲルスの序文で、くわしく、しかも平易に説明されている。本文でも一節から三節にかけて説かれているが、読者がまずこの序文をよく読んでおかれることを希望する。
そして、「労働力」と「労働」の区別が、たんなることばの問題でなく、深刻な階級的意味をもっていることを、しっかりつかんでいただきたい。
さらにすすんだ読者は、『賃金、価格、利潤』の第七―一〇節、『ソ同盟・経済学教科書』 第七章「資本と剰余価値。資本主義の基本的経済法則」、『資本論』第一巻第二篇第四章第三節「労働力の購買と販売」、
同第三篇第五章「労働過程と価値増殖過程」などを研究されるといいと思う。
つぎに本文の主な内容にふれておこう。
第一節では、賃金とはなにか、が論じられ、それが資本家が買いとる労働力という商品の価格であることがあきらかにされる。
そのほか、三二一三ページにかけて、奴隷と農奴と賃労働者とのちがいをしめし、賃労働の歴史性を説いた有名な一節がある。
また、三〇一二ページには、賃労働者が人間らしい生活をうばわれているありさまが説明されている。マルクス経済学の根底にながれている激しいヒューマニズムの精神に注目すべきであろう。
第二節では、まず商品生産の経済法則である価値法則と、この価値法則が競争と生産の無政府性をとおして実現される様子が簡潔に説明される。
『資本論』で言えば、第一巻第一篇第一章第一、二節で説かれている労働価値論の部分にあたる。これによって一般に商品の価値と価格がなにによってきまるかがあきらかにされ、ついでこの節の終りの部分で、労働力という商品の価格すなわち賃金が、同じ価値法則にもとづいて、労働力の生産費すなわち労働者の生存費と繁殖費によってきまることが説かれる。
第三節では、資本が分析される。資本とはなにか。資本はたんなるカネでもないし物でもない。
われわれの家計のカネや家財道具は資本とは言えない。資本とは、時にはカネ、時には物(機械とか原料とか)と、さまざまに形をかえながらも、全体として、賃労働者を搾取することによって自己増殖する価値のことだ。
したがってそれは、資本家と労働者のあいだの社会的生産関係、
階級関係をあらわしている。ここで、第二節で述べられた労働力と労働、価値という概念にとづいて、資本がいかにして剰余価値を獲得するかが説明される。
この意味で、ここはこの本の中心である。マルクスはまだ剰余価値ということばをもちいていないが、ここの内容はまさに剰余価値の源泉を平易に説いたものである。p84、1行目
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